「おおかみこどもの雨と雪」を見た

公式サイト
http://www.ookamikodomo.jp/index.html


感想の要旨

あんまりおもしろくなかった・・物語においてけぼりにされた感じがする。


以下、ネタバレありの感想。


あまりおもしろくないという噂は聞いた。
けれどそれは、期待して見に行ったらそこまでおもしろくなくて、
細かいところが気になったのでは・・と思っていた。
サマーウォーズもいろいろ変なところはあったけど
結果的には2回映画館に行って2,3回DVD見るぐらい好きな映画だったので、
おおかみこどもは題材的に地味そうだけど、そこはなんとかしてるのではないかと。


見終わってびっくりした。
何が起こったのか良く分からなかった。
この映画は一体何だったのだろうと思った。
国語でよくある質問に「この作品で作者が伝えたかったことを述べなさい。」があるけど、
答えは「わかりません」だった。
よくある質問その2「あなたはこの作品を見てどう思いましたか。」の答えも
「わかりません」だった。僕は何を思えばいいんだろう状態だった。


帰り道でずっと考えながら家に着き、とりあえず思ったのが無理ゲーすぎるということだった。
彼女たちがこの世界で生きていくのは厳しすぎる。


この話が成立するためには、せめて花がおおかみ女でなければいけないような気がした。
滅びゆく種族が、人間の世界で肩を寄せ合って生きていく話。
それだって十分にハードルが高い。


そこからは避妊したほうが・・父親死なないほうが・・人間の親子で母子家庭&鉄腕DASHしたほうが
・・と一通り考えてみてからネットのレビューを見始めた。



おおかみこどもの雨と雪』根底に流れる絶望について
http://d.hatena.ne.jp/tsumiyama/20120809/p1

これはたぶん私たちも自明の前提としてしまう絶望です。
「強い個性はきっと排斥される」「相手が善人でも秘密を打ち明けたらきっと痛い目を見る」
といった確信、望みのなさは、なんの説明もなくフィクションの中に描かれても、
成立するくらいリアリティがあります。


でもね、私はこの絶望は疑う価値があると思っています。

おお!無理ゲーじゃないってさ。素晴らしい・・・・。
こんな発想の転換が描かれていたら、すごく満足して帰ってきたと思う。



ネタバレ『おおかみこどもの雨と雪』評
http://d.hatena.ne.jp/aureliano/20120723/1342988265

だけど、そうではなかった。花は、この映画の主人公である子供たちを苦しめる、脇役であり悪役だったのだ。

その発想はなかった。



おおかみこどもの雨と雪」40点
http://movie.maeda-y.com/movie/01698.htm

意欲的な試みも不協和に終わる

すごく的を射た感想だと思う。




それからもう一度、最初の質問を考えてみた。
「この作品で作者が伝えたかったことを述べなさい。」
多分、想像を超える困難を乗り越え子育てをする、母親の強さだ。


映画を見に行くときには、魔法にかかりにいく。
不具合を探しに行くのではない。
でもあまりに無理ゲーすぎて魔法が解けると、いろんなところが気になってくる。
どんなところが無理だったか。

つわりのシーン

→え・・避妊してなかったの・・。
子供を産むって大変なことだと思う。
みんなが子供を産むのはひとえに
自分もそうやって生まれてきた/友達も産んだ/いざとなったら親や国の助けを借りられる
・・だから大丈夫と思えるからだと思う。
相手はおおかみ。何が起こるか分からないし、周りの助けも借りられない。
ここが成立するためには、花もおおかみ女だっていうのが一番いいと思うけど、
そうじゃなかったら、"彼"が人間の母親から生まれた。とか、
人間から生まれた彼の仲間がいるとかいう描写が必要だと思う。省略していいところじゃない。
子供を産むとなったら、相手の男がどんな人間(おおかみ)かも気になる。
今までどんなふうに暮らしてきたか。なぜ人間の世界で暮らしているのか。
二人の親が全く出てこないというのも違和感を感じた。これも省略していいところじゃない。
死んでるにしても、お墓に報告に行ったりするのが自然な気がする。

父親が死ぬシーン

→うぁ、父親死んだww
(予告とか全く見ないでいったので・・)
一瞬席を立ってそのまま帰るべきなのではないかと思った。
なんかもうこの先つまらないんだろうなと思った。
父親を殺してまで、父親抜きで家族物語を作らないでくれ。
どうしても物語から退場させたいなら、意見の不一致で離婚させろ。
子供を人間として育てたい母親と、おおかみとして育てたい父親。
絶対そのほうが話が盛り上がるって。・・ってそんなこと言っても仕方ないけど。

子供がくるっとおおかみに変身するシーン

→絶望的な気分になった。この家族、この世界で生きていけないよ・・・
→なので、あとで
おおかみこどもの雨と雪』根底に流れる絶望について
を見てすごく感動した。こうだったらいいのに。

小児科と、動物病院とで迷うシーン。

→あのシーンは笑うところなのか。泣くところなのか。わからない。
この辺からもう何がなんだか分からなくなってきた。




最初の30分ぐらいはずっと、「ちょっとまって」と思い続けていた気がする。
すっかり物語においてけぼりにされてしまった。
どこかで共感できるシーンがあればそこから乗っていけるかなと思ったけど、それもなかった。
・・これは見る人ごとに違った感想を持たれても仕方がないと思う。


田舎暮らしが始まって、
なんでどんどんハードルが上がっていくのだろう・・
なんでこの物語は人間の母子家庭じゃだめだったのだろう・・
雪が骨好きでもいいじゃん・・なんで趣味変えるんだろう・・
あ・・もしかしたらこのシーンのためにおおかみにしたのかな・・人間でもいいのに・・
けものくさいって言ってつきまとってれば、そりゃぶん殴られるだろ
あ・・もしかしたらこのシーンのためにおおかみにしたのかな・・人間でもいいのに・・
ずっとそんなことを思っていたところに、雪と雨の兄弟ケンカのシーンがあって、
モンスターが戦っている薄気味悪さを感じた。
見ているときは怖かったけど、あのシーンにはおおかみである必然性があったと思う。
ベストシーン。


雪はあんな感じでよかったと思う。
雨はなぜ山の主になろうと思ったのか、その動機が希薄であるように思えた。
あと、山の主になるための、通過儀礼とかないのかな。
とか、家近いんだから、たまには帰ってこいとか。帰ってこなそうだけど。


見ているときの気持ちを、次の日になってから再現するとこんな感じ。




で、そこに
花は、この映画の主人公である子供たちを苦しめる、脇役であり悪役だったのだ。
という発想を加える。


・・そう考えると、花の親としての薄さも納得できる。
花は二人にだめと言うだけ。認めない。
雨を助けた雪を褒めるシーンすらなかった。おかしいだろ。
雪も雨も、自分の考えで道を選んだのだ。
二人とも帰ってくるわけがない。


・・でも監督は、2時間かけて実は悪役な花を描いたのだろうか。
・・そこまで考えていない気がする。
多分監督は、途方もない困難を乗り越えて子育てをする、
母親の強さを描きたかったのではないか。
私は親の役目は、子供が親の助けを借りずに生きていけるように育てることだと思う。
そういう意味では、2人は着々と自立に近づいているし、花は親としての役目を立派に果たした。


じゃあなぜ実は悪役説が出てくるかといえば、
花が親として背中を見せるというか、子供の背中を押すようなエピソードが無かったからだと思う。
なにをどうするか・・というのは、人それぞれだと思うけど、私は親が子供に、
「世間様に迷惑をかけない限り、あなたはあなたのままでいればいい。今まで通り、これからも。」
と伝えることだと思う。
例えばだけど、雪にこう言う。
「あなたがおおかみこどもであることは誰にも知られてはだめ。
  ・・・・だけどね、いつかあなたがほんとうに好きな人ができたら。
  ・・その人にだけは、本当のことを教えてもいい。」
雨にこう言う。(ここは離婚した彼に出てきて欲しいところだけど)
「あなたが山の主になりたいというのは分かった。・・だけど、どれだけの覚悟があるの?」


あと、雪と雨の兄弟ケンカのシーン
花は母親だけど、彼は死んだから父親でもあるってことを見せるのにこれ以上ない。
死ぬ気で止めろ。雨を思いきり殴れ。
家族のピンチには命をかけて立ち向かうと示す。
間違えていることはどうあっても許さないと伝える。




見終わった次の日までもやもやしてたけど、その理由が分かってだいぶすっきりした。
でもまだ何かひっかかっているような気がする・・・・。