前ってどっちなの?

一郎 「最近わかったよ。」
十環 「何が?」
一郎 「よく解ってなかったって事が。」
十環 「へぇー。」
一郎 「このままじゃ死ぬまでかかっても、自分がやりたいことの10分の1もできないかもしれない。」
十環 「でもいいじゃん。やりたいことがあるんなら。おれそういうのないし。」
一郎 「そうなの?」
十環 「あるって気持ちが理解できない。地位・金・名誉・人望、全部欲しいけど手段は何でもいいって思う。そういうの何かちがくね?」
一郎 「そうかな?」
十環 「手段があって、それを本気で実行すれば望みのものが手に入るって言われても、本気になれるか微妙。」
一郎 「いや、なるでしょ普通。」
十環 「お前はいい奴だよ。」


百也 「お前ら情けないな。そんなんだから、ちんたら生きて、あっという間に死んでいくんだよ。」
一郎 「ほんとそんな感じ。」
十環 「むしろ早く終わってほしい。」
百也 「おれは違うよ。小さい頃から目標を見据えて、一歩一歩前に進んできた。おれの人生は困難の連続だったけど、ほとんど同じ数だけ困難を乗り越えてきたんだ。」
十環 「そんな風に思えたら幸せだよな。」
百也 「思ってるだけじゃない。結果も出せた。今は目標とした山の頂が見える所にいる。」
一郎 「百也ならいけるでしょ。」
百也 「ただ・・・・。」
一郎 「ただ?」
百也 「最近思うんだ。目標の設定に若干のミスがあったんじゃないかと・・・・。」
十環 「っはははははは。」


中味 「そんなあなたがたが、同じ職場で同じ仕事をしていることについてどう思いますか?」
一郎 「どうもこうも・・・・やるしかないでしょ。」
十環 「てきとーなんだな、人生って。そう思うよ。」
百也 「誤解を恐れずに言えば最低だよ。」
一郎 「誤解した。」
百也 「失礼。言い直す。おれって結構バカだったんだな。」
十環 「よろしい。」
百也 「じゃ、そろそろ始めますか。」
十環 「おう、ゴミ片付けな。中味も早くその IC レコーダーしまえよ。」
一郎 「人はなにゆえゴミを生むのであろうか?」
中味 「坊やだからさ。」
百也 「この国じゃ優秀なやつほど、やばくて汚いゴミを扱うんだよ。」
十環 「『優秀だ』って言われて喜ぶような奴が、だ。」
中味 「深く考えなければ、どうという事はない。」
一郎 「前に進めって言うけど、前ってどっちなの?。」
十環 「右は箸を持つほう、前はお前が向いてるほうだよ。」
一郎 「了解。」
百也 「あと10回くらいは許すけど、そろそろ始めますか。」
十環 「仏より心がせめぇ。」
一郎 「始めます。」
中味 「何からいく?」
百也 「目についたやつから、適当に。」
十環 「了解。」