未来の花見

今より遥か遠い未来。
とある学校のとある教室。
日本史の授業。



教師「はい、みなさん。今日は20世紀の文化、花見について学びます。」


生徒「花見って・・・・花を見ることですか?」


教師「そうです。ですが、そのやり方は、今とはだいぶ違います。
   前に、この時代には、だんごが愛されていたという話をしましたね。」


生徒「歌まで、できたんですよね。」


教師「そうです、たい焼きに続く大ヒットでした。
   しかし、年に一度、だんごの売り上げが大きく落ちる月がありました。
   それが花見の時期です。
   だんご屋は、『花よりだんご』というキャッチコピーを作って対抗しようとしましたが、無駄でした。」
     
生徒「なんで花見だと、売れなくなるんですか?」


教師「みんなが桜もちとよばれる、桜をモチーフにした和菓子を食べたからです。」


生徒「桜?」


教師「20世紀には多く生えていた、当時は美しいとされていた木です。」



教師が、桜の映像を出す。



生徒「地味・・・・。」


生徒「なんか、こきたない。」


教師「そうですね。でも、21世紀には絶大な人気がありました。
   電報の事は覚えていますか?」


生徒「なんだっけ・・・・1対1で、声だけで通信するやつ?」


生徒「ちげーよ。紙に書いた文章を、人が運ぶシステムだろ。」


生徒「それって郵便じゃなかったけ?」


教師「みんなおしい。電話で文章を依頼して、人が運ぶシステムです。
   人気を示すエピソードとして、桜が咲いた事が、国民に電報で知らされました。」



一瞬ぽかんとする生徒。
その後、爆笑。



生徒「うっそだー」


生徒「ありえねー」


教師「本当です。当時の最先端のコンピューターで計算された開花予想を元に、
   花見に最適な時期を知らせるためのシステムだったと思われます。」
   

生徒「電報って、電話でするんでしょ。誰が電話するの?何人分?」


教師「電話をかけるのは、多分コンピューターでしょう。
   ワン切りという、自動的に電話をかけるためのシステムがあったと言われています。」
     
生徒「でも配るのは人でしょ。」


教師「はい」


生徒「なんでそんな事を?」


生徒「そこらに生えてたんでしょ。自分で見に行けばいいのに・・・・。」


教師「そこがお祭りたるゆえんです。1ヶ月も前から皆が楽しみにしていたという記録もあります。
   万が一にも見逃さないように、そうしたのでしょう。」
   
生徒「えー、無駄だよ。」


生徒「わけわかんない。」


教師「みんな静かに!年賀状のシステムを思い出してください。
   遠くに住む知り合い同士が、自分の家の近くで桜が咲いた事を伝えたという記録もあります。」
   

生徒「またかよ。」


生徒「確か夏にもあったよね。ほんと意味わかんない。」


教師「驚くのは早いです。多くの人が、花が散った時にも電報を送ったといいます。そういう文化だったのです。」



ざわつく教室。



教師「このように人気のあった桜ですが、いろいろと怪しい話もあります。
   まず、日本以外では全く人気がありませんでした。」
   

生徒「そりゃそうでしょ。」


生徒「ださいもん。」


教師「人気が無いというより、憎まれていました。
   アメリカで桜の木の伐採運動を始めた人間は、その功績により大統領になりました。」
   

生徒「リンカーン!」


教師「そうです。しかし日本でも、花見は貧乏人のお祭りと思われていたふしがあります。」


生徒「?」


教師「地面にむしろを敷いて、その上で酒を飲みました。」


生徒「むしろ?」


教師「ゴザです。」


生徒「ゴザ?」


教師「ポータブルな畳です。」


生徒「畳?」


教師「貧乏な人達が使った、草でできたマットです。
   そうやって貧乏人の気分を味わったのです。同情かもしれませんし、お金持ちへのやっかみかもしれません。」

   
生徒「ほんとに貧乏だったんじゃないの?」


教師「そうかもしれません。カーペットをくれ、ほんとの酒をくれと言いながら騒いだという記録もあります。
   さらに、花が散る様子は、人が死ぬ事の暗示でもありました。
   敵の前で桜のタトゥーを見せて、
   『この桜、散らせるものなら散らしてみやがれ!』と決め台詞を言うドラマがヒットしたそうです。
   これは、殺せるものなら殺してみろという意味です。」
   
生徒「ヤクザドラマですか?」


教師「そうです。金さんというチャイニーズマフィアの話です。
   同時に、始まりの象徴でもありました。入学式を盛り上げるためだけに桜が植えられ、
   新入社員は花見で歓迎されました。」

   
生徒「なんで始まりなんですか?」


教師「時期的な問題でしょう。この時期に咲くのが、桜ですから。
   新入社員の教育という面もあったようです。」


生徒「貧乏人を思いやるって事ですか?」


教師「貧乏に慣れておけという事です。かわいそうですね。
   それでは今日の授業は以上です。」



カラオケもどうかと思うけど、


カーペットで花見をするような会社には入りたくないww


桜の季節にはなぜか雨が降ったり風が強かったりして、あっという間に散ってしまうけど、
散った花びらが風に舞うのは、ただ散る時よりずっと美しいと思う。
これが雪だと、しんしんと降っている時のほうが、閉じ込められてしまいそうな迫力があるのが不思議だ。