ワイルド・ソウル(下)★★★★ + ★/2


ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫)


読み始めたら一気読み、2日で読んでしまった。
ただ単にストーリーをなぞるだけでなく、事件を間近でみているような息苦しさ、興奮が伝わってくる。


この事件での敵役は、どれもひどい奴らだ。
自身の保身と出世のためなら、他人の人生がどうなろうとおかまいなし。
しかも、あの状況では仕方が無いとか、自分の力ではどうにもならないとか言い訳をする。


こんな事をされたら許せないけど、
自分がする側になってしまうのは、もっと我慢できない。
が、巨大な権力・・・・多数の人間の思惑・・・・の中では、一人の意見など簡単に吹き飛んでしまうのかもしれない。


けど、それを仕方ないとかで片付けていたら、また同じ事が起こる。
日本は独裁者に対する警戒心は強いけど、
同調することでの不感症には、ものすごく鈍感なのでは・・・・


知らないということは、それ自体で罪なのだ。
移民者たちの地獄の過去もつゆ知らず、お気楽にこの国で生きてきた馬鹿国民に、
思いきり冷や水を浴びせかけることができる。
国家なんぞ、所詮はこんなものだと思い知らせてやることができる。


今までは、日系ブラジル人と聞いても、ブラジルから来ている出稼ぎの人達としか思ってなかったけど、
やっとその意味を理解した。


十二国記でも「知らない事は罪」という描写があったけど、おれには(今のところ)そうは思えない。
隠す事、知っているのに無視する事は罪だと思う。
知ろうとしない事が罪かどうかは微妙だ。
・・・・答えは簡単、教えちゃえばいいんだよね。
それがこの本です。


マイナス点
下巻になって、繊細さが減ったような・・・・
事件を描くのにパワーがいっちゃってたのかもしれないけど、そこでこそ。
警察がしょぼいというか唐突なのも。事件の終わりがあっさりしてた。
エンディングには大満足だけど。