「使える兵器使えない兵器」を読んだ
- 作者: 江畑謙介
- 出版社/メーカー: 並木書房
- 発売日: 1997/11/20
- メディア: 単行本
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この本はただの自衛隊兵器図鑑ではない。
兵器調達の視点から見た防衛戦略について、
技術とは何なのかということについて考えさせられる本だ。
いろんな兵器を例に挙げて、
そこからどんな思想が読み取れるかということについて詳しく書かれている。
それらから自衛隊の問題は、装備が劣っているとか実戦経験がないとかではなく、
防衛戦略が無いことであることが解る。
F15戦闘機、74式戦車、90式戦車、
それぞれがダメな兵器というわけではないが、
あまり考えずに調達し、運用しているのだ。
兵器には技術的な側面もある。
この本では技術ならではの問題、失敗もわんさか出てくる。
台湾が作ったフェーズドアレイレーダー、
中国が作った原子力潜水艦、
日本が作った74式戦車。
ここでもやはり、技術に対する姿勢、
つまり戦略が必要になってくる。
戦略という言葉は広い意味を持っていて、
使う人、状況によって違う意味で使われるけど、
私は「環境に適応するための意志決定をすること」だと思っている。
日本は、防衛においては環境を知ろうともしないし、
意志決定なんてとんでもないと考えている・・というように感じる。
もしかしたら他の分野でもそうだから、
今の日本に元気が無いのかもしれない。
以下、本文より引用
■
軍備の第一の役割は抑止力、つまり軍備を実際に使用しないするところにある。
専守防衛であれ、実際に使用される時には、第一にして最大の任務が果たせなかった事を意味する。
(中略)
要するに実践で使われることを真剣に考えいないのである。
いれは一面では、皮肉に言えば幸せなことであるが、
いくら軍備の本質は抑止力にあるといっても、その抑止力が破れた時に、
こんな戦車に乗って戦えと言われる兵士は気の毒であるし、
我々納税者から見ても、そんな装備でよしとはどうしても言えない。
使ったときに効果がある軍備だからこそ、抑止力が発揮できるのである。
相手に侮られた時、その軍備の抑止力は失われる。
現在の自衛隊の装備にそのような例は少なくない。というより多い。
■
日本ではどうも、あらゆる科学技術分野にこの傾向が強いように思われるが、
「海のものとも山のものとも」という新しい科学/技術研究開発には
予算が認められ難い傾向がある。
これは明治以後の、欧米科学技術の導入、消化を繰り返してきた体制のなせる技か、
それとも誰も責任をとらない組織体制の弊害か、さらには欧米文化に対する
インフェリオリティ・コンプレックスがいまだに抜け切れないためなのかは
わからないが、「冒険」を忌避するという傾向については否定できないだろう。
要するに失敗を許さない文化、社会なのである。
(中略)
日本の自衛隊用装備があまりにも諸外国の兵器の真似で、
しかもその世代の最後に出現してくるようなものが多いように思えるのは、
どういう訳であろうか。
■
これは自衛隊とは限らないのだが、軍隊は意外に世界の情勢に無知である。
(中略)
軍人は訓練や任務遂行に多くの時間と労力がとられ、外部のことに目を向け、
気を配る余裕をなくしている場合が多い。
また自分の任務を一生懸命やればやるほど、「これでいいのだ」という考えに陥りがちである。
(中略)
そんなことは、外国の軍事専門誌を見るだけでも分かったはずである。
毎年各地で開催される兵器展示会や、海軍装備展示会に行けば、
世界の技術的傾向と状況は、そう間違いなく把握できるはずである。
にもかかわらず、世界が見えていなかったのである。